印の芳香。
名叢同士ならば特徴のひとつくらいにしか感じないが、それ以外の生き物(名叢ではない山霊・人間・動物・虫など)にとっては、彼らの放つ香りは致命的な魅力となる場合がある。
香りの誘惑や癒しを知れば、その魅力に抗うのは困難。
最も影響を受けてしまうのは人間だが、山霊も名叢に仕えたければ、印に過剰反応しないことは絶対条件と言える。マルは冥の印に興奮したり脱力したりはしないので、平然と仕えている。
由璋は王に初めて会った時、おのれの記憶深くに忘れ去っていた美しい思い出を呼び覚まされた(王と由璋の出逢い)。
由璋にとって王の印は、心の錠に鍵のように作用する香りだった。
冥は名叢の中でも芳香が弱いほうだから、けっこう近くに寄らないと感じることはかなわない。
冥の印に反応してしまった者は、懐に飛び込んでいきたくなってしまう。そこに冥のすぐおいでおいでしてバイバイも早い性質が合わさった結果の惨事を、マルちゃんは何度も見ているのだった……
冥は…自分の印に蜜を欲しがる蝶のように寄って来た子を、絡め取って踊らせるのが楽しいんじゃないかな。まともに相手しないんだと思う。
自分に好意を持つ相手に対し、冥は翻弄する。王は翻弄される。真逆。
妃は遠目から勝手に推してる人が多いイメージ。妃は他者を寄せ付けない生き方をしているし、神々しく、恐れ多さを抱かせる。
王も同じようだけど、王は好意を嗅ぎ付けると急に壁を取っ払うから仲良くはなりやすい。
百華って、自分の印に惑う者がいたらどう対応するんだろう……
「悪ィ、応えらんねぇ。王以外の奴のこと気にしてらんねぇから」
ー完ー