結婚
「あー…、ええと、宜しく。己 (オレ)は王(ウアン)という。」
「初めまして。私は妃(フェイ)。」
「知ってるよ。昔、百華(パイファー)が遠目から教えてくれた。今いる中で天啓の名叢は、己と君だけだって。一度話がしてみたかった。会えて嬉しい。」
「でもこうなるとは思ってなかったわね。」
「それは…まぁ。」
「……」
「…妃さん。己は王(おう)と言っても何の権限も持たない。…君の意思で断っても良いんだよ。」
「……私はこの話、お受けしたからここにいるの。」
「…ああ、うん。」
「王さん、あなたは私に…伴侶となる者に、何を求める?」
「えっ!?」
「婚儀の前に、訊いておきたくて。」
「……え、」
「…」
「…、己を好きになって欲しい…」
「!……」
「……」
「……」
「…今のは、そういう話じゃなかった?」
「………私の意見も聞いてもらって良い?」
「あ、勿論。」
「あなたと結婚はしますけど、他人でいたいの。」
「……ん、…え?」
「まず別々に暮らしたい。私性に合わないの。夫婦でも、会わないでいる時は他人でいたい。だからあなたがどこで何をしていても良いし、他の誰を好きでも、それは私に義理立てしなくていいわ。でも一緒にいる時間は、私はあなたの妻である努力をするから。あなたもそうして欲しい。」
「それじゃあ…諸々の摺り合わせもあるし、近いうちにまた会いましょう。」
「ああ、……」
「王、妃に会ったか?」
「…百華、結婚って何だっけ……」
「俺に訊くんじゃねぇよ。」