散文/月琴

皇帝を朝4時に起こしに行く係の宦官がおりました。

部屋の外から「お時間です!」と叫ぶ仕事です。

皇帝は毎朝その声に苛々しては、「うるさいっ!」「何が慣例だ、この役職は不要だ」「どうせなら画眉鳥のように美しい声を出してみろ」「明朝も変わらぬようなら叩き斬るぞ!」などと怒りました。

すると宦官は、次の日から部屋の外で得意の月琴を鳴らし始めました。

感心した皇帝は、「良い特技を持っているな」と声をかけました。

 

その宦官は後に、官軍が次々と反乱軍に寝返っていく中、疑心暗鬼になった皇帝に最後まで従い、自らその死に殉じた数少ない臣下のひとりとなったのでした。